玉掛け作業の経験者が教える、【5つの実務ポイント】

クレーン運転士

こんにちは、ユキムラです!

クレーンや玉掛けの資格を取得された方は、今後の職場で活かされると思います。

これから話すことは、経験者の方だと

「あ~、そんなの知ってるよ」

そう感じるかもしれません。

しかし未経験者の方は、玉掛けをしたことがないので、不安になりますよね?

そこで今回は、未経験者の方のために玉掛けの実務作業について、ポイントを絞ってご紹介します。

クレーンのポイントについても別記事で書いたので、よかったらご覧ください。

私の玉掛け経験

まず私が経験してきた、10年間の【玉掛け実務】を簡単にご紹介します。

物流会社時代

最初に入社した会社は、海運関係の物流会社です。

工作機械や自動車パネルの金型などを、梱包・輸出作業をしていました。

いろんなメーカの機械を扱っていたので、左右非対称の重量バランスだったものや、長さが5mを超える重量物の玉掛け作業を4年半ほど経験しました。

鉄道会社時代

次に入社したのは、鉄道関係の会社で、電車の車輪などがある【台車】の整備を担当していました。

車輪を支える台車枠といわれるものと、それに付随した部品関係の玉掛け作業を6年ほど経験しました。

両職場で共通していえるのは、

クレーン】【玉掛け作業を、セットで学べたことです。

ユキムラ
ユキムラ

この経験をこれから働く方のために、少しでも参考になる玉掛けの技能をご紹介していきます。

今日から使える玉掛け5つのポイント

玉掛けとは、【クレーンのフックにワイヤーロープなどの吊り具を、掛け外しする資格】だと以前ご紹介しました。

クレーンによる労働災害の多くは、玉掛け作業によるものといわれ、玉掛けの技能は必ず身につけたいところです。

この両職場を通じて感じた玉掛けのポイントを、私なりに5つ挙げてみました。

玉掛け作業のポイント
  • 吊り具の正しい選び方
  • 吊り角度
  • フックへの掛け方
  • 荷物の重心
  • 荷物の吊り方(応用編)
ユキムラ
ユキムラ

これから5つのポイントについて、深掘りしていきます!

吊り具の正しい選び方

まずはじめのポイントは、吊り具の選び方です。

クレーンの吊り具にも、いろいろありますが、私が主に使ったのは2種類です。

  • ワイヤーロープ
  • ベルトスリング

この2種類の使い分けと、選び方について解説していきます!

ワイヤーロープ

ワイヤーロープは、金属の細かい線(素線)を寄り合わせて、1本の線にしたものです。

強度があって寿命も長く、もっとも一般的な吊り具です。

重量物を吊るのに適しています。

ベルトスリング

細かい繊維を編み込んで作られたものです。

荷物に傷をつけたくない場合に使います。

ユキムラ
ユキムラ

ワイヤーロープより曲がるので、使い勝手がいいです。

実際の現場では、長さと太さが異なったワイヤーロープなどがあり、どれを使ったらいいか分からなくなります。

「この荷物は1tあるんだけど、何mmのワイヤーロープを使えばいいの?」

そんな経験ありませんか?

ユキムラ
ユキムラ

そこで使うのが【安全荷重表】です!

みなさんの職場では、吊り具が置いてあるところの近くに、このような表はありませんか?

玉掛け作業者必携より

安全荷重表で分かることは、ある太さのワイヤーロープで、吊ることができる荷物の重さです。

例えば1tの荷物を吊りたいとき、何mmのワイヤーロープを使えばいいかというと(吊り角度は60度)。

9mmのワイヤーロープを使えば吊ることができます。

ユキムラ
ユキムラ

実際の作業では吊り上げる瞬間に、ワイヤーロープを触って、張り具合に余裕があるか確認しましょう!

吊り角度

吊り上げるワイヤーロープが決まったら、次に考えたいのが【吊り角度】です。

フックから荷物まで掛けられた、ワイヤーロープの角度によって、ロープに掛かる負担が違います。

下の図をご覧ください。

200kgの荷物を吊り上げるとしましょう。

吊り角度0度では、ワイヤーロープ1本に掛かる荷重は100Kgです。

しかし120度では、2倍の200Kgにもなります。

いかに小さい角度で吊らなければいけないか、お分かりいただけましたか?

現場では、60度以内で吊るようにしましょう。

ユキムラ
ユキムラ

吊り角度が大きいと、フックからワイヤーロープが外れたり、切断してしまったりして大変危険です。

フックへの掛け方

玉掛け作業では、吊り具をフックに掛ける方法も重要です。

ワイヤーロープをリング状にした、【アイ】をフックに掛ける場合は、そんなに問題ありません。

しかし【アイ】を、荷物側に掛けるときは注意が必要です。

この場合、フックにワイヤーロープを掛けようとすると、下の写真のようになります。

しかしこの掛け方をすると、金属同士で滑りやすく、ワイヤーロープが動いてしまうことがあって危険です。

私も以前にこの吊り方をして、荷物を転倒させかけた経験があり、ヒヤリとしました。

そこで、滑りを防止する方法が【肩掛け】です。

名前のとおり、フックの肩部分にワイヤーロープを掛けてから、クロスさせます。

そして、荷物にアイを掛けてください。

そうすると、多少重心がずれた荷物でも、ワイヤーロープが滑りにくくなるんです。

ユキムラ
ユキムラ

この方法は、物流会社に勤務していたときに、とても役立ちました。

荷物の重心

今まで玉掛け作業をしてきたなかで、もっとも重要なポイントだと私が思ったことです。

適切な重心の位置が分かっていないと、次のような事故につながります。

  • 吊り上げたときに荷物が転倒
  • 運搬中に荷物が落下
  • 吊り具に過大な負荷が掛かり切断

例えば次のイラストをご覧ください。

Q、このイラストの荷物では、どのあたりに重心があるでしょうか?

学生時代に【物理】の経験がある方は、分かるかもしれませんね。

正解は【荷物の中心】にあります。

そんなこと誰だって知ってるよ

そう思われた方もいるかもしれませんが、この知識を知っていないと、荷物が不安定になり、事故につながるんです。

では重心を意識して、荷物を吊ってみましょう。

Q、どちらの吊り方が、安定すると思いますか?

吊り上げる位置を想像しながら、考えてみてください。

実際の現場作業でも、この選択肢に遭遇することがけっこうあります。

正解は【B】です。

一見すると【A】の方が、下から包み込むような感じで吊っているので、安定しているように見えますよね。

しかし重心は、低いほど安定する性質があります。

したがって吊る位置から重心が低いところにある、【B】の方が安定するんです。

ユキムラ
ユキムラ

重心の位置は、必ず中心にあるとは限らないので、見極める力を養うのも大切です!

荷物の吊り方(応用編)

次は(応用編)として、荷物の中心に重心がない場合の方法です。

このイラストでは、みなさんはどのように吊り上げますか?

先ほどとは違い、重心の位置が右側に寄っていますよね。

この場合で同じように吊り上げようとすると、荷物が右側に傾いて不安定になり、転倒してしまいます。

また吊り位置の高さがそれぞれ違うので、同じ長さのワイヤーロープ類も使えません。

この状態で吊り上げようとすると吊り位置の高い方(右側)のロープが弛んでしまいます。

それなら右側だけ短いロープを使えばいいんじゃないの?

そう思われた方もいると思います。

私も最初はそう思いましたが、現場作業をしているとなかなかピッタリのロープがないんです。

そこで登場するのが、【チェーンブロック】という吊り具です。

象印チェンブロック(ホームページより)

この吊り具の特徴は、中心に重心がない荷物をまっすぐ吊り上げるために、ロープの長さを調整することができるんです。

チェーンブロックの使い方をご説明します。

1. まずクレーンのフックに【ワイヤーロープ1本】と【チェーンブロック】を掛けてください。

2.そしてクレーンを巻上げて、重心に近い方のワイヤーロープを張った状態にします。

3.チェーンブロックのフックにも、【ワイヤーロープ1本】を掛けます。

4.チェーンブロックの鎖を【巻上げ方向】に回して、ワイヤーロープの長さを調整します。

象印チェンブロック(ホームページより)

5.チェーンブロック側のワイヤーロープも張ったら、あらためてクレーンで巻上げてください。

少し地切りさせて、荷物の状態を確認しましょう。

このときにまだ荷物が傾くようなら、一旦クレーンを巻下げて荷物が着地してから、あらためてチェーンブロックで長さを調整します。

この繰り返し作業になりますが、まっすぐ吊れるようになったときには、本当にスッキリしますよ!

ユキムラ
ユキムラ

重心がずれてる荷物の玉掛けは、特に事故が起きやすいので、細心の注意で行ってください。

まとめ

私の玉掛け経験は参考になりましたか?

今回ご紹介した内容は、私が働いていた会社での内容です。

みなさんが働いてる会社では別のルールがあるかもしれないので、作業をするときにはしっかりコミュニケーションを取りましょう。

安全第一」を常に考えながら、作業することを忘れないでください。

それではこのあたりで!

コメント