玉掛け技能講習 受講記

クレーン運転士

ユキムラです!

皆さんは【玉掛け】という言葉はご存じですか?

工場や建築現場などで働いている方は、パッと思いつくかもしれません。

しかし未経験で、これから玉掛けの資格を取得する方は、疑問を感じてる方もいると思います。

「玉掛けって何?」「取得の難易度が気になる」という方に向けた記事です。

【玉掛け】とは?

玉掛けとは単刀直入にいうと、【クレーンのフックに、ワイヤーロープ・ベルトスリングなどの吊り道具を掛けることです。

(ベルトスリングとは繊維状のひもを、縫い合わせた帯状のものです。)

「フックに掛ける作業をするだけで、資格がいるの?」と思われたのではないでしょうか。

しかしクレーン作業で起こる、労働災害のほとんどは、玉掛け作業によるものといわれています。

吊り荷の落下事故】【ワイヤーロープと荷物の間に挟まれる】災害などがあり、最悪の場合、死亡事故になっているのです。

労働者の玉掛けに対する基礎知識や、事故防止力を習得させるために、玉掛け技能講習を実施しているのです。

自分の命を守るため、必ず受講しましょう!

定格荷重とつり上げ荷重

定格荷重】と【つり上げ荷重】という言葉を聞いたことありますか?

クレーン業務経験者の方はご存じだと思いますが、玉掛け作業をする上では重要事項ですので、ご説明します。

皆さんの職場にあるクレーンに、このような表示をしたプレートはありませんか?

この表示は、【定格荷重】を表しています。

ここからは少し頭が痛くなるかも知れませんが、今後クレーン運転士の免許取得を考えてる方は、参考になる内容です。

定格荷重とは?

【クレーン等の構造および材料に応じて、また、ジブやブームを有するクレーン等では、ジブやブームの傾斜角および長さに応じて負荷させることができる最大の荷重から、吊り具の質量を差し引いた荷重をいいます。】

「えっ?」と思われたことでしょう。

要約すると、クレーンが実際に吊ることができる重さの限界です。

上の写真だと、(1、5t)まで吊ることができるクレーンです。

定格荷重は、現場作業をする上で目安になるので、必ず確認しましょう。

つり上げ荷重とは?

つり上げ荷重は、定格荷重に吊り具の質量を加えた荷重になります。

(つり上げ荷重=定格荷重+吊り具の質量)

ユキムラ
ユキムラ

吊り具の質量は、ワイヤーロープ・ベルトスリングなど、玉掛け用具の他、クレーンのフックも含まれます。

クレーンの【定格荷重】・【吊り上げ荷重】の違いと作業時の注意点
定格荷重と吊り上げ荷重の違いって分かりますか? 両者の違いと、実務作業で考えられる実例をご紹介します。

吊り具の種類

吊り具もいろいろ種類があるので、主なものをご説明します。

ワイヤーロープ

Wikipediaより

玉掛けの吊り具といえば、真っ先に思いつくのではないでしょうか。

技能講習でも使用します。

ワイヤーロープにも多数あり、より方や太さによって吊れる限度があるので、安全荷重表などで確認しましょう。

ベルトスリング

ベルトスリング

ワイヤーロープの次に思いつくのは、ベルトスリングではないでしょうか。

吊り荷に傷をつけたくない場合や、ワイヤーロープで、遊びができてしまうときに使用します。

長年使用していると、徐々に「ほつれ」が出てくるので、早めに交換しましょう。

グラブバケット

まるごと覚えるクレーン・デリック運転士より

グラブバケットは、開閉できるバケットを通常、フックがついてる場所にとりつけます。

そして、石や砂などバラ物の運搬に使います。

リフティングマグネット

まるごと覚えるクレーン・デリック運転士より

リフティングマグネットは電磁石を利用して、鉄の吊り荷を吸引して運ぶ吊り具です。

スクラップ品など、リサイクル業者などで使用されています。

バキュームリフター

まるごと覚えるクレーン・デリック運転士より

バキュームリフターは、吸着部を真空にして、吊り荷を吸いつける吊り具です。

表面がツルツルしてる、ガラス製品などの運搬に使用されています。

スプレッダ

まるごと覚えるクレーン・デリック運転士より

スプレッダは港の埠頭にある、【ガントリークレーン】の吊り具です。

コンテナを船に積み込むときに、使用されています。

他にも業界によって、個性的な吊り具がありますが、今回はこのあたりで割愛させていただきます。

資格の内容

玉掛けの資格は2種類あり、皆さんの職場にあるクレーンの性能で、どちらを受講すればいいか決まります。

  • 玉掛け技能講習
  • 玉掛け特別教育

資格によって玉掛けできる、つり上げ荷重は下表にまとめました。

つり上げ荷重1t以上1t未満
玉掛け技能講習
玉掛け特別教育×

表を見ていただくと分かる通り、玉掛け技能講習はつり上げ荷重が1t以上・未満のクレーン、すべての玉掛け作業ができます。

対して玉掛け特別教育は、1t未満のクレーンしか玉掛け作業ができません。

私の経験上、大抵の工場や建築現場などで使うクレーンに、1t未満のクレーンはありません。

最初から【玉掛け技能講習】を受講した方が、手間や費用面でお得になります!

ユキムラ
ユキムラ

クレーンの性能で受講義務が決まるということは。

クレーンのつり上げ荷重が1tで、吊り荷が500㎏だった場合でも、玉掛け技能講習の受講が必要です!

玉掛け技能講習の内容

ここからは、玉掛け技能講習の詳細を語りたいと思います。

玉掛け技能講習は学科2日、実技1日の合計3日間で行います。

私も受講しましたが正直に言うと、しんどいです。

難易度

資格の難易度は、難しくありません。

学科・実技とも、授業の最後にテストはありますが、出題するところは授業で教えてくれます。

授業中に居眠りをしたりしていなければ、合格できます。

学科

学科は【玉掛け作業者必携】という、日本クレーン協会発行の参考書を元に進められます。

講師の進め方にもよりますが、私の場合はお経を読んでいるように感じられ、睡魔との戦いでした。

しかしポイントを聞き逃してしまうと、テストで痛い目を見てしまうので、気をつけましょう。

項目は次の通りです。

講習内容講習時間
クレーン等に関する知識1時間
クレーンの玉掛けに必要な力学3時間
クレーン等の玉掛けの方法7時間
関係法令1時間

クレーン等に関する知識

クレーンの種類から構造・機能・安全装置・ブレーキの構造、種類について学びます。

クレーンの玉掛けに必要な力学

【力学】皆さんは聞いたことありますか?

学校の【物理学】に相当する授業です。

主な項目は次の通りです。

  • 力のモーメント
  • 質量と重心
  • 速さ・速度
  • 遠心力と向心力
  • 滑車装置
  • 荷重と応力

少々お堅い内容ですが、講師の方が言うポイントだけ押さえておけば問題ありません。

クレーン等の玉掛けの方法

基本的にはテキストに沿いますが、現場経験のある方が、講師となって授業をしてくれます。

実務経験のなかで危なかったことや、災害にならないためには、どうすればいいのか。

作業者目線で、分かりやすく教えていただけます。

玉掛け技能講習の学科で、1番長い授業ですが、身につく内容です。

玉掛け作業の方法を、DVDで学ぶ時間も設けられています。

関係法令

法令は文字どおり、法律で決まっていることの説明です。

個人的には1番眠くなる授業でしたが、テストでも出る範囲です。

講師の方が言われる、重要ポイントだけしっかりチェックしておきましょう。

実技

実技の講習内容は次の2項目あり、丸1日使うので、盛りだくさんの内容になってます。

講習内容講習時間
クレーンを運転するための合図1時間
クレーン等の玉掛け6時間

クレーンを運転するための合図

玉掛け作業者が、クレーン運転士に向けて出す合図の講習です。

手と笛を使い、合図が確実に伝わるように教わります。

詳しい内容は、下の図にまとめました。(玉掛け作業者必携より)

クレーン等の玉掛け

クレーンと吊り荷を使用し、玉掛け作業者として、先ほど教わった合図を、実践形式にした講習です。

2人1組になり、講師が運転するクレーンに合図を出しながら、玉掛け作業を行います。

私はランダムで相手を決められました。

もし失敗してしまうと、共同責任になってしまうので、お互いに仲良くやりましょう。

ユキムラ
ユキムラ

一期一会です。

苦手な相手でも、ここだけは我慢しましょう!

玉掛けの手順

1.手と笛の合図で吊り荷を地切りする

(地切りとは地面から少し浮かす程度)

2.巻上げの合図で吊り荷を2M以上にする

3.巻下げの合図で地切り地点まで下げる

4.ゆっくり着地させる

以上で終了です。私の場合は、吊り荷の移動はありませんでした。

教習所によって若干手順が違うかもしれませんが、講師の方が分かりやすく教えてくれると思います。

玉掛け用具の選定

玉掛け用具の選定は、直径の異なる5種類ほどのワイヤーロープがあります。

そこから、指定された直径のワイヤーロープかを選ぶ講習です。

定規などは使わず、目測で選ばなければいけないので、最初は難しいです。

しかし、何度も経験を積んで分かるものなので、ここでは感覚を養ってもらうことが大切です。

質量目測

私のなかでは、質量目測が1番難しく感じました。

要約すると、【目測で吊り荷の体積を求めて、重さを割り出す】という講習です。

私が講習したときは、形の違うコンクリート製の物体が、何種類かありました。

質量目測の手順は次の通りです。

1、物体の【長さ・奥行き・高さ】を求める

(自分の手を定規に見立てて測定します)

2、測定した寸法をもとに、体積を求める

(形状ごとの体積の求め方)

3、最後に質量を求める。

質量=体積×1㎥当たりの質量

単位体積当たりの質量は、材質ごとに違うので下の表をご覧ください。

物質の種類1㎥当たりの質量(t)物質の種類 1㎥当たりの質量(t)
11.41.9
8.91.0
7.8石炭粉1.0
鋳鉄7.2石炭塊0.8
亜鉛7.1コークス0.5
銑鉄7.0カシ0.9
アルミニウム2.7ケヤキ0.7
粘土2.6スギ0.4
コンクリート2.3ヒノキ0.4
2.0キリ0.3

計算自体は算数のレベルですが、久しぶりに単位の換算をやったので、軽くテンパってしまいました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

少々長い記事になりましたが、私が思いつく、玉掛けについてご紹介しました。

玉掛け技能講習は、非常に参考になる講習ですので、クレーンに興味ある方はぜひ受講してみてください。

それでは今回はこのあたりで!

コメント